2013年8月29日木曜日

胎動

梅雨明けが宣言されたにもかかわらず時折激しく窓を打つ雨音にまぎれてケータイにメールが届いた。

リッターレコード更新!
I山さんおぼえてたよ。

送り主はもちろん塾長であった。驚くことにトミンウェザー、すなわち他の地域が雨でもトミンサーキットには雨が降らないというシチュエーションが未だ健在ということである。いや、それ以前にこの短い文の中には違う想いが込められているようにおもえて仕方がなかった。

いつまでスネてるんだい?センパイだって走っているしオレだってこの通りだぜ?!

実際塾長がそう思っていたかはわからないがなぜかあの日はそう語りかけられたようにしか考えられなかったんだ。
メールを読んだあとは久しく忘れていた感覚が、小さいが、でも確実に芽生えてきた。
I山さんと久しぶりに話がしたい。いや、そうじゃない。
ボクサーが拳で会話をするように、である。

かつてバイクに乗っていた者と今走り続けている人との会話はバイク以外の話題でしか成り立ち得ない。以前とある会合に呼ばれた時に痛感したものだ。
それ以来いく度となくバイクに乗ろうとしたものの本気で腰を上げることは無かった。
塾長が我が家に泊まりにきていただいた夜も遅くまで飲みながらあるバイクが欲しいと云いつつも遂にはオートバイを手にすることはなかったのだが、はたして何故かこの時ばかりは心が揺れたのだった。

それにしてもバイク事情に疎くなりすぎている。
まずはどんなバイクがあるのかと近所のバイク屋をのぞくとGSR750が置いてあった。
今度バイクに乗るとしたら子供とタンデムできて街乗りもしやすいモノを選ぼうと思っていたのでこれは丁度いいと塾長にメールで伺ったらナシではないが、、、という曇った返事であった。
しかしこの日からバイクの情報収集に勤しむことになる。
と、同時にクリアせねばならない問題、即ち岡妻の了解を取り付けるための工作も始めることになる。
まずは不自然に中古バイク情報誌を買ってみたりワザワザ中古屋から電話して見たり。
一週間ほどだったか塾長とメールのやり取りをしながら岡妻にもジャブを放ち続けた。

そうこうするうちに僕の心を鷲掴みする二台のバイクが現れたんだ。
そう、それは突然に、、、。

つづく

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